2014年1月25日土曜日

Marius Cultier(マリウ・クルティエ)



Marius Cultierはフランス海外県マルティニークで1942年に産まれたキーボーディストです。アマチュアながらミュージシャンであった父のもと、幼くして楽器に触れるチャンスがあったマリウは、8歳の頃には8つもの楽器を弾くことができたと言われています。そして14歳で両親を亡くすと、彼の興味は本格的に音楽に注がれていきます。
1956年頃、彼は友人の影響でジャズに触れる機会を得ます。その当時はジャズだけでなく、サルサやマンボなども貪欲に聴いていたようです。この体験が彼の音楽の特徴であるジャズとフレンチ・カリビアンを融合させることの原体験となっているようです。
ちなみにマリウは、1963年にプエルトリコで開催された国際ピアノコンテストで、アマチュアながらプロを差し置いて優勝しています。さすが。

1966年、マリウはマルティニークからカナダに居住を移します。そして69年には1stアルバム「marius de la martinique」をリリースします。Coco Boogalooという曲が有名で、7インチでもリリースされています。1stにして既に、彼の特徴であるジャズの黒さ(ファンクの黒さもあるように感じますが)と洗練されたカリビアンテイストの融合がはかられているように思えます。やはりエレピで演奏しているのがいい。暖かみと品の良さを感じます。

70年にはセルフタイトルである「marius cultier」をリリースします。Zoukがよく知られています。そして70年には「a la place des arts」もリリースしています。こちらは名曲SunnyのカバーだけでなくCuando, Cuandoあたりも有名です。ちなみにこの作品はクボタタケシさんもとあるディスクガイドで勧めているので、DJカルチャーに触れている方々には馴染み深い作品かもしれないですね。
そして75年には、一般的に彼の最高傑作と言われている「ouelele souskai」がリリースされます。とはいえ、どれか1枚選べと言われたら個人的には「a la place des arts」をやっぱり選びます。

ちなみにマリウは85年に若くしてその生涯を閉じます。83年に1枚LPを出していますが、彼の黄金期は70年〜75年と言っていいでしょう。レコードはどれもわりと高いし見つかりにくいですが、何枚かはCDやiTunesでも再発されています。興味があったら探してみてください。品がよくて優しく踊れて艶っぽい音楽のトリコになること請け合いですよ。

2014年1月15日水曜日

ファンカラティーナって響きがいーな



ファンカラティーナはイギリスで80年代に生まれた、ファンクとラテンを融合した音楽といわれています。みんな大好きHaircut 100とかCulture Club(あくまで初期)をはじめ、Modern RomanceCaptain Sensibleなど様々なアーティストがファンカラティーナな名曲を残しています。書籍でも振り返ることができて、2011年に発刊された80's ROMANCEというディスクガイドが面白いです。モッズ・ニューウェーブとサマー・オブ・ラブの間に挟まれた80年代の音楽。ファンカラティーナに限らず、この時代の音楽はポップで大好きです。

で、今回ファンカラティーナについて書いたのは「しあわせになろうよ / 嫁入りランドとプロポーズ」という曲に触れたことがきっかけでした。2013年リリースでフリーダウンロードもできますのでぜひ聴いてみてください。
嫁入りランドと、オノマトペ大臣+THAMESBEAT(!)の「プロポーズ」との共作で、ホーン全開の素晴らしいトラックと共に昨今わりと珍しい男女でのラップが聴けます。その歌詞(リリック?ヴァース?)に「ラジオから聞こえる ファンカラティーナ/ズレた口笛が あなたらしーな」ってところがあって、その歌詞(リリックなの?ヴァースなの?)を口ずさむたびにウキウキしてしまいます。
そう、誤解を恐れず書けば、ファンカラティーナという言葉には、ひとをウキウキさせるチカラがあります。そういう言葉は多かれ少なかれ誰しもが持っている気がするし、性格も出て面白そう。いろんなひとに聞いてまわりたいですね。

嫁入りランドはジオラマブックス発の自主制作漫画雑誌「ユースカ」2号で、スカートとみゆとと(嫁入りランド) feat. mochilonという形で音楽を担当しているようです。他にもokadada feat. 鴨田潤(イルリメ)も参加しているようで、どんな音楽なのか楽しみです。ジオラマブックスは2013年にユースカのリリースイベントを数々のバンド・アーティストと共に開催するなど、漫画にとどまらず面白い活動をしている漫画レーベルだと思います。余談ながらスカートもすごくいいです。邦楽好きで未聴の方はぜひ聴いてみてください。

そして完全に蛇足ですが、2013年はBlood OrangeなどなどR&Bがインディ界隈を賑わせました。2014年はパンクの波が来ると密かに目論んでいます。古いパンクからちゃんと聴きたい。ところで最近Maximum Joyが好きです。ファンカラティーナの要素が皆無ってわけでもない。ざっくりしてるな、ファンカラティーナ。

2014年1月5日日曜日

BOB AZZAM(ボブ・アザム)



BOB AZZAM(ボブ・アザム)は1925年にエジプトのカイロで生まれました。ちなみに亡くなったのは2004年なので、つい最近といえば最近までご存命だったのですね。
1950年代後半から60年代にかけてのフランスでの活動が彼の黄金期と考えられていて、Mustapha(ムスタファ)という曲が世間一般では最も良く知られています。ムスタファはボブ・アザムの曲ではなく当時の流行歌であったようで、様々なアーティストからカバーされています。日本でも1960年に坂本九が「悲しき六十歳」としてカバーしており、作曲欄にはボブ・アザムの名前があります。ちなみに70年代後半にQueenが同名の曲をリリースしていますが、これはカバーではなく別の曲です。閑話休題。
60年代はムスタファなどいわゆるワールド系の楽曲が多い彼ですが、60年代後半から70年代にかけてポップな曲が増えてきます。例えば67年にはMas Que NadaやCan't Take My Eyes Off youなど有名曲をカバーしています。また、同時期にはオリジナル曲のタイトルに英語が使われるようになり、曲調もよりポップなものに変化していきます。あ、Can't〜のカバーはワールドミュージックとポップスを同時に消化しようとした結果、気持ち悪さと気持ち良さが絶妙に混じったカバーなので、機会があればぜひ聴いてみてください。
そんな中、1971年にリリースされたLPがGarden Of Loveです。ジャケットが2種類あり、上に載せた方がファースト版と言われています。もうひとつは裸の女の人が座っているジャケットです。Can't Take〜では消化しきれなかったワールドミュージックとポップスとの融合が、このLPでは見事に実現しています。特にLet's Celebrateという曲は数多くのトラックメーカーからも愛されており、これこれなど、沢山のサンプリングソースになっています。もちろんワタクシも5本の指に入るほどに大好きです。
実はLet's Celebrateは7インチもリリースされていて愛聴していたのですが、ひょんなことからその7インチが割れるという不運に見舞われました(これ、サラッと書いたけど2013年の個人的な重大ニュースのひとつです)。
そんなに簡単に見つかるレコードでもないし、運命だと思って諦めよう…でも諦めきれない!などと悶々としていたとき、Garden Of LoveのLPを入手する機会がありました。家宝にします。もう割らない。